モーター・減速機の修理・オーバーホールを検討すべき理由
- 一也 大竹
- 6月27日
- 読了時間: 6分
工場設備の「心臓部」であるモーターや減速機は、生産ラインの安定稼働を支える非常に重要な装置です。しかし、24時間稼働を続ける過酷な環境下では、経年劣化は避けられません。
「まだ動いているから大丈夫」「故障してから考えればいい」そう思っていませんか? その考えが、将来的に大きな損失に繋がる可能性があります。
モーター・減速機とは?
工場設備において、モーターと減速機は切っても切れない関係にあります。多くの場合、この二つの装置はセットで使われ、生産ラインの根幹を支える重要な役割を担っています。
モーターとは
モーターは、電気エネルギーを回転運動の動力に変える装置です。工場内で製品を動かしたり、機械を稼働させたりする上で欠かせない存在です。通常、モーターの回転数は電源周波数によって決まり、一般的なモーターは1分間に1500〜1800回転ほどの高速で動作します。
減速機とは
では、なぜ高速で回転するモーターに「減速機」が必要なのでしょうか?
減速機は、その名の通り、歯車などを組み合わせて回転速度を遅くする装置です。もしモーターをそのままの速度でコンベヤベルトなどに使用すると、ベルトがとてつもない速度で回転し、製品の正常な搬送ができなくなってしまいます。このように、稼働させる設備の最適な速度に合わせて回転数を調整するのが減速機の主な役割です。
しかし、減速機は単に速度を落とすだけの機械ではありません。速度を落とすことで、同時に大きな力を生み出す効果も持っています。これは、自転車のギアチェンジを考えると分かりやすいでしょう。
例えば、6段変速の自転車で坂道を上る際、私たちはギアを軽く(低いギアに)することで、ペダルを漕ぐ力は変えずに、より大きな推進力を得ることができます。減速機もこれと同じ原理で、モーターの回転数を下げることで、より大きなトルク(回転する力)を発生させ、重いものを動かしたり、強い力を必要とする作業を可能にするのです。
つまり、減速機はモーターと組み合わさることで、高速回転を適切な作業速度に変換するだけでなく、必要な「力」を生み出すという、工場設備にとって不可欠な役割を担っているのです。
モーター・減速機の突発的な故障が招く「見えない損失」
モーターや減速機は、ベアリングの摩耗、歯車の欠損、油漏れなど、日々の運用の中で徐々に劣化が進行します。そして、これらの兆候を見逃すと、ある日突然、以下のような甚大な影響をもたらします。
生産ラインの緊急停止 予期せぬ設備の停止は、生産計画の狂い、納期遅延、品質問題に直結し、多大な機会損失を生み出します。
高額な緊急修理費用 突発的な故障に対する緊急修理は、部品調達のリードタイムや特別料金が発生し、通常のメンテナンスよりも高額になりがちです。
根本原因の未解決による再発リスク 場当たり的な修理では、根本的な原因が解決されず、短期間での再故障リスクが残ってしまいます。
このような事態を避けるためには、故障が発生する前の「予防保全」の考え方が不可欠です。
故障のサインを見逃すな!前兆からわかるSOS
実は、多くのモーターや減速機は、突然停止する前に何らかのサインを発しています。これらの微細な変化に気づき、早期に対処することが、大規模なトラブルを未然に防ぎ、生産ラインのダウンタイムを最小限に抑える鍵となります。日々の点検で以下の兆候に注意しましょう。
異音の発生: 「ゴー」「キー」「カラカラ」など、いつもと違う音が聞こえる
異常な振動: 運転中にこれまでになかった振動や、振動の増加
発熱の増加: 触れると異常に熱い、あるいはサーモグラフィで高温が確認される
油漏れ・グリス漏れ: シール劣化などによる潤滑油の漏洩
性能の低下: 回転速度の低下、出力トルク不足、効率の悪化
異臭の発生: モーターのコイルが焼けたような焦げ臭い匂いや、劣化した潤滑油の匂い
これらの兆候は、内部でベアリングの摩耗、芯ずれ、過負荷、潤滑不良、コイルのショートなど、深刻な問題が進行している可能性を示唆しています。
「修理」「オーバーホール」最適な選択とは?
故障の前兆が見られた、あるいは計画的な保全を考える際に、「修理」「オーバーホール」という選択肢があります。
修理は、機器の特定の故障箇所や不具合部品のみを修正・交換することで、トラブルに迅速に対処し、生産停止時間を最小限に抑えることを目的とします。費用は抑えられますが、その他の部品の劣化は残るため、将来的な別の故障リスクは残ります。
一方、オーバーホールは、機器を完全に分解し、内部の全ての部品を詳細に点検・診断し、摩耗や劣化した部品を交換、清掃、調整などを総合的に行う作業です。これは単なる故障箇所の修復に留まらず、機器全体の性能を新品に近い状態まで回復させることを目的とします。初期費用は修理よりもかかりますが、長期的な安定稼働とダウンタイムによる機会損失削減に大きく貢献します。
貴社の機器の稼働年数、重要度、故障の状態、そして工場全体の生産計画や予算によって、最適な方法は異なります。
施工事例紹介
東芝製モーター ベアリング交換

修理・メンテナンスの状況
医薬品工場のお客様でご使用されている、窒素発生装置のモーターのメンテナンスを実施した事例をご紹介させていただきます。こちらのお客様では窒素発生装置の年次点検を定期的に実施しております。今回の点検を実施した結果、中に組み込まれているモーターが経年劣化を起こしている兆候が見られたため、メンテナンスを実施する運びとなりました。
サイクロ減速機入替工事

修理・メンテナンスの状況
減速機の一定の回転数を担保するために、減速機のメンテナンスをしたいとのことで依頼を頂きました。しかし、終日運転している為、機械を止める事が出来ませんでした。そこで、現場で減速機のオーバーホールを希望されました。
診断からアフターフォローまで一貫対応できるパートナーを
モーターや減速機の故障原因は多岐にわたり、専門的な診断が必要です。複数の業者に依頼することは手間がかかり、情報連携不足から復旧が長引く可能性もあります。責任の所在が不明確になるリスクも伴います。
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